オペラ歌手の須藤慎吾です。
前回の続きです。
iPadを楽譜として使うには、お持ちの楽譜をPDF化して取り込む必要があります。
「えー!?」「なにそれ?」「どうやるの?」「めんどくさそう!」という声が聞こえてきそうですが、
必要なものさえ揃えてしまえば(基本はiPadだけでOK)、簡単かつ我々音楽家の懐に優しい(ランニングコストのほぼかからない)方法で、電子楽譜を作ることができます。
もちろんスキャンする予算があれば業者にやってもらうことも可能ですし、
スキャンする設備が整っている方は普通の方法で普通にPDF化することも可能です。
ここでは私が普段行っている「場所や時間を選ばない」「コスパの良い方法」を紹介します。
では早速「自分だけの電子楽譜」を作っていきましょう。
必要なもの
iPad
これがなくては始まりません。
音楽家必携ガジェットは言い過ぎではないと思います。
基本的にiPadと下記の2つの無料アプリがあればできます。
Evernote Scannable(無料アプリ)
書類をスキャンするアプリ。
Scannableは高速でスキャンするので、数枚の楽譜なら手で持ってラフにスキャンできます。
もしあなたが撮影時のiPadの重さに耐えられるなら、下記の譜面台やタブレットスタンドは不要です。
とても便利なアプリ過ぎて、なぜこれが無料で使えるのか不思議でならないぐらい高性能です。←エバーノートの補助アプリという立ち位置なのかな
Piascore(無料アプリ)
電子楽譜を閲覧するアプリ。
めちゃめちゃ楽譜が見やすく多機能です。
我々音楽家の宝です。
あまりに便利すぎて、感謝の気持ですぐに課金しました。
楽譜を見て書き込むぐらいなら無料のままで使えます。
また、ネット上のパブリックドメインサイトIMSLPと連動しており、簡単に著作権フリーの楽譜を検索してダウンロードできます。
(著作権等、楽譜の取り扱いにはくれぐれもご注意ください)
課金すると、楽譜を閲覧書き込みだけでなく、メトロノームやキーボードも使えます。
譜面台もしくはタブレットスタンド
Scannableの性能がいいので手で保持してスキャンすれば譜面台等はなくても良いのですが、
これがあると作業が捗ります。
音楽家なら自宅にも譜面台が1台ぐらいはありますよね。
それに最近の譜面台は無段階が主流になりましたので、スキャン時の高さ微調整も手で保持するよりも簡単にできます。
電子化する楽譜
PDF化する時はかならず著作権に注意し、購入した楽譜をスキャンして個人でお使いください。
私は下記に引用した(※)著作権法例外の一つ”私的利用のための複製”や”引用として一部だけ”として法内で使用しているつもりです。
個々によって法の捉え方は変わってくるかと思いますので、問題を感じられた場合はご指摘いただけると幸いです。
スキャンはコピーの一種ですので、くれぐれもご注意いただき、自己責任で行ってください。
※著作権法で定められた例外について
著作物の利用について、著作権法では例外が定められており、著作者の許諾なしに利用しても良い場合があります。
以下がその一例です。
・私的利用の為の複製
・図書館などでの複製
・引用
・教科書への掲載
・学校における複製など(部活動、クラブ活動は対象外)
これらの制限規定の範囲を超える利用は、著作権者の許諾を得る必要があります。
準備するのは以上です。
iPadをお持ちならすぐに始められますね。
楽譜をアプリ「Scannabele」で取り込む
1.楽譜の背景
楽譜と背景のコントラストが強いほうが、アプリがしっかり認識してくれるので、楽譜を載せる場所に気をつける。
ここではボルドー色の板を利用しています。
2.iPadと楽譜のセッティング調整
セッティング調整...といっても、下記画像のように置くだけです。
譜面台にiPadをセットしますが、カメラ部分を覆わないように載せます。
3.アプリ(Scannable)を起動する。
4.アプリや楽譜位置のセットをする。
アプリのデフォルトでは書類を自動で読み込む設定になっているが、ここでは手動にする。
左下の「・・・」をクリックして(写真1(A))、「撮影」をクリックして手動に切り替える。←画面右にスキャンボタンが現れる(画像1(C))。
画面内にスキャンしたい楽譜がおさまるように譜面台(タブレットスタンド)の高さや楽譜の位置を調節し、スキャンボタンを押し、楽譜を1ページずつ順番にスキャン(撮影)する。
画像1
アプリがスキャン画像を自動でトリミングを実行し、歪み補正や色調補正もしてくれます。
ただiPadのカメラで楽譜を撮影しただけなのに、本の開きによるカーブを認識して、五線譜や言葉をまっすぐに修正してくれます。
とても見やすく、真新しい紙のように補正してくれます。
画像2
Tips あとでトリミングし直せるので、スキャン時に神経質に位置合わせする必要はありません。
5.画像チェック
画面下のスキャン済み画像(画像1(D))をダブルクリックして画像を拡大して確認する。
もし楽譜がうまく認識されていなかった場合は、楽譜画像をクリックして楽譜右下の「・・・」をクリック(画像3(E))、楽譜下に並んだアイコンから「切り取り」(画像4(F))を選択。
画像3
画像4
6.トリミング
元の画像の四隅と上横をドラッグして調整し(画像5(H))、右上の完了をクリック(画像5(G))すると、トリミング修正。
画像5
7.楽譜の順番を変更
楽譜の順番を変更したい場合は、右上の順番を入れ替える(画像6(I))をクリックしたその先の画面で、画像をドラッグすることで簡単に変更できる。
画像6
8.ファイル名と保存形式を決める
楽譜下にある「Scannableの文書」を好みの楽譜名に変更(画像6(J))する。←私は「作曲家名_曲名」としている。
楽譜名変更の右側のアイコンをクリックしてPDF形式を選択(画像6(K))する。
楽譜をアプリ「Piascore」で閲覧できるようにする
1.Piascoreを起動
アプリ同士で共有させやすいように、先にPiascoreを起動しておく。
2.Scannableで送信
Scannable画面に戻って、左下の「送信」をクリック(画像6(L))。
なぜ送信?と思う方も多いと思いますが、そういうものだと思ってください。
画像7
3.アプリ間で共有
Scannableで右下の「共有」をクリック(画像7(M))。
ずらりと並ぶアプリアイコンの右端にある「その他」をクリック(画像8(N))。
App候補の中から「Piascore」をクリックすると一瞬でPiascoreが読み込まれ保存される。
画像8
最後に
これであなたも楽譜を簡単に電子化できます。
Piascoreの機能を使って、書き込んだり、自動めくりさせたり、ページをジャンプさせたり、拡大してみたり...使い方無限大。
ちょっと言い過ぎな感じではありますが、
自分で取り込んだ楽譜の他にパブリックドメイン(簡単に言えば条件付きだけど無料の)楽譜も沢山利用できます。
iPadをお持ちの方はぜひお試しください。
最後までお付き合いありがとうございました。
それでは、良い歌を!